木下ときわ

5月の音

風薫る季節。先日、亡くなった父の友人であるサックス奏者兼焼き鳥屋主人のコンサートに行ってきました。友人、と言っても父より先輩で、今年90歳になられるのですが若々しくて、たまに電話をくれるのです。父も在籍していたそのバンドにはさらに先輩がいらっしゃって、92歳のテナーサックス吹き。最後の曲の「マイ・ウェイ」をそれぞれの味わいで吹いておられて、かつては越路吹雪さんなどのバックで演奏されていたその音色から、いろいろなことを感じました。人生って深くて面白い。

GW中にはお台場で開かれていたラテンフェスティバルに。イーリャブランカのブラジル料理に久しぶりに舌鼓!元気が出ます。ステージでは、メキシコのオールドスタイルのバンドの熱気があふれんばかり。老若男女が盛り上がっている。メキシコは音楽でも美術でも、伝統を大切にする文化があり、いい意味でアップデートされないのだそうです。水木しげるも、欧米の影響を受けておらず独自の文化があるから、メキシコがいちばん好きな国だと、読んだことがあります。

さらに先日は、ブルーノート東京でのマリーザ・モンチ。90年代にサンパウロで見たのも鮮烈でしたが、今回も心を照らしてくれました。ブルーノートくらいの距離で見ると、人となりが分かるような気がしますが、私の好きな、名古屋の喫茶店のお姉さんと雰囲気が似ている・・と思って、後日海外メディアのインタビュー記事を読んでみたらかぎ針編みをしている、というのが同じでした。
世界の分断を憂い、白黒つけない、グレーゾーンや陰影を大切にするとも語っていました。ステージから喜び、愛、そしてインスピレーションを与えてもらいました。

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