江戸とパリ。

(旅の話 つづき)
僕はパリもローザンヌも初めてで、仕事とはいえ幸い空き時間も多く、そこに行くこと自体が楽しみでした。
ローザンヌはとっても静かな、穏やかな印象。雪は程よく降る。スイス国内のチューリッヒやベルンに次ぐ4番目の大きさの都市だそうだがまあ小さな街だし、同じフランス語圏の隣国のパリのようなスピード感もなく、スローな時間が流れてました。車ものんびり安全運転です。戦火を免れたせいで古い街並みがのこる。そういうところをならべて書いてみると、そういえばちょっと飛騨高山っぽいです。個人的にすごくこの町が気に入ってしまって、パリへ移動する日はなんだかしんみりしてしまったほどです。
のんびりした田舎から移動したせいか、その後行ったパリは最初早くてめまいがしそうでしたね。フライング気味に開くメトロのドアが印象的。大阪より歩くの早いです。美術館や橋などの建築がルネサンス風にゴテゴテしてて、これがまたデカくて、なんだか東洋の田舎者には居心地悪し。エッフェル塔は夜パチンコ屋のようにチカチカ光るんですね。でも1日歩き回って一晩寝たらすっかり慣れて。イスラム移民街でクスクスを山盛り食べ、マルモッタン美術館でモネの絵画を見て感動し、マダガスカル島勤務からパリ日本文化会館に異動してきたTさんといろいろ話すようになってからは、すっかり居心地が良くなって、最終日はまだ全然帰りたくない気分でした。パリに定住してる知人が多い理由が分かった気がします。
いずれの都市にしても、市民の個人主義な感じというのか、日本で見かける”おばちゃん5人組”とか”上司ひとりと部下5人の集団”みたいな「群れ単位」での行動がほとんど見られないのは予想通りでした。日本人でヨーロッパに住んでる人は、この「群れに属さなくても変人と思われない」感じ、いわば大人っぽさが居心地いいのかも、と想像しました。
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さて公演ですが、今、日本の古い文化がパリで好んで紹介される機会がとても多いようです。この日本舞踊公演にしてもその内のひとつといえる。これは私見ですが、どうやらパリなどの「成熟した老年期文化」がこれから歩む洗練が、江戸時代までの700年で日本が作ってきた封建時代の芸術の洗練と、概念的に重なるのではないか、と思えるのです。モネの画の構図が尾形光琳に似てるな、とか、それだけではないのですが、僕にはパリと江戸が少し重なって感じられました。
今回同行した邦楽の方たちは、そういう時代に生まれた邦楽を琴や尺八で奏でるわけですが、ところが僕自身は西洋の思想をかじって、洋楽を好み、ギターを弾き、と、日本では普通ですが、全然日本を外に向かって表現できる存在じゃないんですね。僕が参加したのは古典ではなく新作舞踊の方だったのですが、音の間の取り方とか感じ方をずいぶん千麗先生に指摘されて、その指摘は僕にはとても日本的「間と音の感覚」であると思いました。なんだか元々体に眠っていた感覚を呼び覚まされた感じで、だから意外とすんなり「邦楽的表現」になじめたんだと思います。結局日本での稽古では arranged by西川千麗といえるほどのギターパートが出来上がって、僕はそこで指摘された表現と、自分の中のなつかしい音感覚と、邦楽の方たちから盗んだ奏法を試すだけで、とても楽しく、発見も多い舞台をさせていただいたという気分です。
個人的に今回は外国でなにかを見聞きしてゲットする旅行でもなければ、持っている文化を紹介する伝統音楽ツアーでもなく。現地の町や都市や人から何かを感じてそれをエネルギーにし、共演者からは日本文化も教えてもらって、という特異な体験でした。


4 Comments

  • スイス - ローザンヌ旅行トラベル口コミ情報 2007年6月9日 at 3:48 PM

    スイス – ローザンヌ旅行トラベル口コミ情報

    ヴォルゴグラードは、ロシア連邦のヴォルガ川西岸に位置する都市。1925年まではツァリーツィン、1925年から1961年まではスターリングラードと呼ばれていた。第二次世界大戦の独ソ戦の激戦地としても知られる

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  • 23 2007年5月10日 at 8:56 PM

    いやあ、こちらこそご一緒できて嬉しかったです。
    ところでユウジさんの声まね芸はプロレベルですね、僕はあれから身近な人の声まねをよくやるようになりました。しかしなかなか、ユウジ先生のようにいくはずもなく。
    尺八の小山先生の映像(飲み会)をとってあるのですが、見るたびに笑ってしまいますね。

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  • ユウジ 2007年4月29日 at 11:18 PM

     たった今、一連の三つの記事を、あの日に帰って読ませて頂きました。
    もともと都会が苦手な私は、結局最後までパリに馴染むことはできなかったのですが、
    ローザンヌはとっても好きでしたねぇ。「飛騨高山に似ている感じ」とおっしゃるのにもうなずけます。
    ローザンヌ講演の朝に一緒に歩いて頂いた時の、教会の金の音、
    そして冷たいながらもどこか透き通ったあの空気は、今でもはっきり残っています。
     確かに、ローザンヌやパリ、どちらの公演地においても共通して言えることは、
    その場所にあふれているたくさんのものから漂うオーラや空気感、
    そういったものを一度自分の中に吸い上げてから、次ぎにやっと発信する。
    的外れかもしれませんが、私もそんなことを感じながら、海外での初講演を楽しむことができたんです。
     改めて、ご一緒させて頂けて嬉しかったです。本当にありがとうございました!!

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  • MYMYブログ 2007年4月8日 at 12:30 PM

    Soul Assassins

    音楽紹介ブログをやっております。ヒロヒゲヒーローと申します。TB不愉快でしたら申し訳ないです…
    削除の方お願いします。前回はDJマグス
    で紹介したのですが
    今回は【Muggs Presents the Soul Assassins, Chapter II】を紹介
    タワレコやHMVで検索かけても出ないので
    今回はアマゾンさんにお世話になります^^
    曲目
    1.Real Life
    2.We Will Survive
    3.Y…

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