下山。

福島の山小屋に10日間。
山小屋のそばにもう一軒、建てかけのままほったらかしになっている木造2階建てがある。屋根や窓があるけど電気は来てなくて、ココに小屋から電ドラで電気引いて明かりを灯してみたらなかなかいい雰囲気。部屋の鳴りも良いし録音に使えるんじゃねーか?と思い立ち、掃除して、カマドウマやハチを退治し、屋根裏の穴を発砲ウレタンなどでふさぎ、などしてみた。計5日間。
機材を運び込んでCDをかけてのんびりしてみたのだけど、見えないところに大きな虫穴があいているらしく、山に生息する巨大なマダラカマドウマにまで楽々侵入を許してしまう始末。きっと秋冬はすきま風どころではない。こりゃ「施工」が必要だなと腹を決めて今回は諦め、山小屋のほうで録音環境を作って少し音を録ってきました。
それにしても今回は、初日の大雨に始まり、井戸のポンプが動かなかったり、車が岩に乗り上げて動けなくなったり、なかなかハードであった。そのつど雨水を貯めてしのいだり、岩を掘り返してジャッキアップしたりして自力で脱出したり。10年分の庭の雑草を刈り払い機で刈ったり、油ぎったコンロまわりと換気扇をピカピカにするころには疲労もピーク。唯一露出している顔面はたくさん虫に刺され、高い脚立に乗って屋根穴をふさいでいたときには謎の虫に刺され腕全体が赤く腫れ上がったり。つま先に鉄が入った長靴を用意したり、山の準備は万全のつもりだったけど、まだまだですね。
そういえば小屋まで来る山道の途中に大きな石碑があって、開拓の苦労を詠んだ俳句が彫ってあるんですね。小屋から先は原生林だからここは人間生息の最前線なわけで、そういう”開拓の緊張感”みたいなものは感じてました。
しかし。晴れた夜はプラネタリウムのような星空で、刻一刻と変化する風や光や虫の鳴き声は多様。色んなものが鮮明で激しいです。五感が研ぎ澄まされます。海も近く、炭火で焼いたホタテ貝は最高だった。
期間中は例によって福聚寺の座禅会に参加。三春町の花火大会と重なって、見事な花火も拝めた。和尚が突然”山を歩くので靴を履いて”というので参加者全員夜の裏山を早足で歩く。真っ暗な中、老人には危ないなと思うのだが、和尚曰く”暗い山道を早足で下ってるときは、まったく雑念ないですね”と。かなり急な坂だったが結局誰もケガしなかった。
思えば初めて使う刈り払い機で膨大な雑草を刈っているときも、日没が迫る森の中で岩を掘り返して車をジャッキアップしているときも、一片の雑念もなく必死に研ぎ澄まされていましたね。